史上最大級のチーム戦「ATPカップ」展望
こんばんは。
もう来シーズンの開幕まであと16日です。
えっ、あと16日なの?それは私が一番思ってます。
オフシーズン中に進めるはずだった閑話球題シリーズもネタ仕込んでるんですが、調べてるとなかなか進まないのであと1~2記事上がればいいなと…
それに年明けに向けて色々と準備しなければいけなくなりまして。
端的に言うと近々いいお知らせができそうです。お楽しみに。
多分一番楽しみにしてるのは私なのですが…
2020年、五輪イヤーということですごいことをやっちゃいたいなと思います。
さてそんな五輪イヤーですが、ATPツアーは開幕から予想不可能の新設大会を迎えます。ATPカップです。
今日はこのATPカップについてのルール確認と、簡単な展望をしたいと思います。
ATPカップは今年から新設された総勢24チーム、100名以上の選手がオーストラリアに集結して行う史上最大級のチーム対抗戦です。
何をもって史上最大級とするかは微妙です。
ご存知の通り、デビスカップは世界100ヶ国以上が参戦しています。しかし、ルールが改正された2020年現在でも、原則はホーム&アウェー。一度に集まるのはゾーン3以下とファイナルのみで、最大18ヶ国。
それに対して、1つの期間で24ヶ国が集まり優勝を争うATPカップは、捉え方によっては最大と言えそうです。ただし、これも厳密には3都市に分かれて試合を行うので、やっぱり最大「級」くらいが適切な表現かなと思います。
ATPカップのルールは、新しいデビスカップファイナルのルールにかなり似ています。デ杯ファイナルを経験したことで、テニスファンにとってはルールを受け入れやすいかなと思います。
・出場チームを4ヶ国ずつ6つのグループに分けてリーグ戦を行う
・各組1位+各組2位の中でよかった2チームがベスト8進出、決勝トーナメントへ
・シングルス2本+ダブルス1本の3本勝負。予選はすべて消化、決勝トーナメントは結果が決まった段階で打ち切り
・単複の連闘はあり(制限なし)
・キャプテンを一人設けて、チェンジコート中などで選手にアドバイスができる
この辺りは、出場チームが18→24に変わったデ杯ファイナルと捉えればOKです。グループ2位のチームのうち一部だけ進めるのも「目無し問題」の解消目的なので、全く同じです。
なお、デ杯はITF管轄のため、ATPツアーのポイントがかかった大会としては史上初めてオンコートコーチングが認められる大会となります*1
逆にATPカップのデビスカップファイナルと違うルールをまとめます。
・ダブルスはノーアド、ファイナルセットはマッチタイブレーク(10ポイント)
・対戦相手と内容に応じてATPランキングポイントがつく
・特に昇降格という概念はない
ATPカップの出場権は、各国の選手のATPランキングによって決まります。どれだけまずい成績を出しても、翌年の出場権が決まる時に選手が上位にいれば出場できます。
またダブルスは現在のATPツアーでも採用されている「促進ルール」です。※私が言っているだけで公式的な名前ではありません
デビスカップファイナルではダブルスを確実に消化+下手すると2時間半ゲームということがありましたが、この促進ルールだとだいたい1時間~2時間以内に収束するので、あまり負担にはならないかなと思います。
そして気になるランキングポイントですが、対戦相手のATPランキングに対応する変動制を取っています。
またここで得られたランキングポイントは、通常数えられる18大会の枠とは別に、ボーナスポイントとして追加されます。ATPファイナルズと同じです。つまり、出て損になる理由がないということです。
出場するプレイヤーとしては、全豪の前哨戦で調整もできて、勝ったらランキングポイントも入るのでこんなにうまい話はありません。
しかし一方で、ATPカップの出場資格は純粋にランキングの優劣だけで決まらないため、不平等であるという意見も出ています。
ミルマンやオペルカはこの制度に対して疑問をSNSで発信しています。
実際、オーストラリアやアメリカのようなテニス大国の4~5番手は、50位~100位付近で、ATPカップに出場するケースは少ないです。それどころかベンチ要員としてスケジュールを拘束されます。
一方、テニス小国の2番手の選手は、そのランキングが200位や300位になることもありますが試合に出れます。
一応自身のランキングが300位以下の場合、得られるポイントも小さくなるように是正措置はとられていますが、それでも不平等なのは否めません。
正直追加ボーナスポイントまではやりすぎというのが私の正直な感想です。ATPポイントはスケジュールを拘束する以上つけるべきだと思いますが、18大会のノンマンダトリーの置き換えにできるくらいが適当だったのではないかと思います。*2
一応今回の想定される対戦相手と、それに対応する勝利した場合のランキングポイントを載せておきます。
Ranking points available during ATP Cup group stage.
— Oleg S. (@AnnaK_4ever) December 2, 2019
(based on the teams' current Top 2 singles players)
(unofficial calculation — errors possible, feel free to spot and correct them) pic.twitter.com/EdyObWTpqa
わかりづらい!!!!!!!!!
各組の組み分けは、シングルス上位選手を有している国がシードとなり、シード帯同士が当たらないように組み分けをします。
ただし2020年は、一旦組み分けした後にフェデラー(スイス)が棄権したため、次点だったブルガリアがスイスの場所に入りました。これは例外的な措置で、原則
①9月の段階で1~18位までの国(とWC)を選出し、ドロー抽選
②11月の段階で残りの国を選出し、残った場所のドロー抽選
の合計2回のプロセスで対戦カードを決定します。
2020年はこんな組み分けになりました。
2組ずつ3都市で試合を開催します。
パースはホップマンカップ、残り2都市はATPツアー開催中の都市で、それぞれそこで使われていたセンターコートを使います。
個々の組み分けについては細かく解説はしませんが、もう誰が見ても分かると思いますがグループFが死の組です。デ杯ファイナル2019のベスト8が3チーム。実は今回、残りの5組にはデ杯ベスト8が1チームずつですから、これがいかに厳しいかは分かると思います。ギリシャを除くとすべてのチームで2番手、ダブルスともに充実しているチームばかりで、いったいどこが勝ちあがるか全く分かりません。
さて、デ杯ファイナルの時と同様に、全体7位8位で拾われるチームはどんな勝敗条件なのか?ということを最後に検討してみたいと思います。
ただし、2020年ルールブックはまだオープンになっていないため(2019/12/18現在)、あくまでデ杯ファイナルと同じルールで進んだ場合と仮定します。
ただ順位決めの方法はこれくらいしかないはずなので、たぶんこれでいいと思うのですが…*3
4チームのリーグ戦でちゃんと試合が完結した場合、星取表は次の4パターンしかありません。
①3-0、2-1、1-2、0-3
②3-0、1-2、1-2、1-2
③2-1、2-1、2-1、0-3
④2-1、2-1、1-2、1-2
つまり、グループ2位のチームの勝敗として考えられるのは、2-1、1-2の2つです。とはいえ②のパターンばかりになるとはあまり考えにくいので、まずチームとして2勝1敗になることが必要条件になりそうです。
さらに次の評価対象になるのはラバー勝敗だと思われるのですが、2勝1敗のチームのラバー勝敗として考えられるのは、7-2から4-5までです。
ということから、おそらくラバー6-3のセット率くらいがボーダーになるのではと見ています。
デ杯で(本当はなかったけど)降格ボーダーを正確に読み切ったので今回も自信あります。
日本チームの対戦順はウルグアイ→ジョージア→スペインの順です。チームランキング順に対戦するので、とてもやりやすいですね。
日本決勝トーナメント進出に向けて必要なことは、スペインに負ける確率が極めて高いことを考えると、まずウルグアイとジョージアに連勝して、できればスペインにラバー1-2で負けても可能性が残る条件を作っておくことになります。
具体的には、ウルグアイかジョージアに3タテして勝ちたいです。両方できればスペインに負けてもかなりの確率で決勝トーナメントに行けます。
錦織が出れるかは、現時点ではかなり厳しい状況ですが、デ杯ファイナルでも示したように今の日本チームは史上最強。錦織抜きでもこの相手関係なら決勝トーナメントに行ける可能性はあります。正直グループBは楽なほうだと思います。
年初でフレッシュな体で臨めますが、国別対抗戦で張り切りすぎてけがをして全豪欠場、なんてのは絶対に避けてほしいです。どうしても国別対抗戦だと気合入っちゃう人多いですからね…
デビスカップファイナルと違い、予選リーグの間は全てのチームについて必ず中1日でやることが保証されています。またダブルスも促進ルールのため、連闘の負担もデ杯よりは軽減されます。11月の時のような悲劇が起きないことを願うばかりです。ルール上は比較的大丈夫なはずなんですが。
今回の大会の結果がデ杯のさらなる改革へつながる可能性もありますし、もちろん激動の時期を迎えたATPツアー新シーズンの、全豪前哨戦としての役割も大きいです。目が離せない大会となりそうです。
大会期間中は3会場同時に試合が進行するので、追う方はなかなか大変ですが…
AbemaTVで全試合生中継されるので見る試合も選び放題!お正月から楽しいテニス観戦ライフとなることを期待しています。
2019 デビスカップファイナル 感想
本日はデ杯ファイナルの感想です。遅くなって申し訳ありません。
まず日本チームは大善戦と言っていいでしょう。特に優勝候補フランスを追い詰めた死闘は興奮しました。
第1ラバーの内山×ツォンガ戦は力の差が出たゲームになりました。ちょっとどうにかなるような内容ではなかったです。
第2ラバーの西岡×モンフィス戦で事件は起きました。
まず西岡が立ち上がりの悪かったモンフィスからブレーク成功。その後戻されたゲームはもったいなかったですが、1セット目も終始西岡のペースで進んでいたように思います。
モンフィスは試合に入り切れてなかったのか、攻めるとすぐミス、守っていてもたまにミスという形で、ポイントを取る形が作れませんでした。
対して西岡は持ち前のテニスを存分に披露。攻めと守りのメリハリをきっちりつけて、決してつないでいるだけではなく攻めてポイントが取れることも示し、モンフィスに攻めないと勝てないような印象を植え付けることに成功しました。
こうなると西岡です。上位選手でも捕まると自滅していってしまいます。まさに西岡が上位選手に勝つときのお手本のようなゲーム展開でした。
最後はモンフィスも半ば強引に決めに行って試合は一気にワンサイドに傾きました。ストレート勝ちで今年2度目の対トップ10勝利をこの大一番で決めました。
そしてダブルスでは、内山/マクラクランが、たった2日前にNAF優勝を決めたばかりのエルベール/マウーと対戦。絶望的に見えたこのカードでしたが、1セット目のタイブレークを取り、あと一歩まで追い詰めます。
内容はややエルベール/マウーが押しながらも、粘り込んでどちらのセットも可能性がある試合展開でした。
しかしあと1セットが届かず。大金星を逃す形になりました。
次の試合でもそうだったのですが、マクラクランがきつそうでした。ベストなプレーから遠い内容。もともとダブルスのスキルの中ではサーブが一番長所でしたが、それも鳴りを潜めつつあり、ストロークではシングルスもできるフランスペア/セルビアペアに押し負けてしまうため、いいところが出ませんでした。
内山は好調で、ビッグプレーも飛び出していましたが、中国戦に続いて連係ミスが出るなど、紙一重の勝負では痛いミスが日本ペアに出てしまった結果かなと思います。
セルビア戦は3連敗。翌日にツォンガに勝利するクライノビッチがオンファイアー。内山に代わって出た杉田も悪くなかったですが、この日はちょっと手が付けられませんでした。
西岡もジョコビッチ相手に食らいつきましたが、大会初戦だったジョコビッチにペースを掴まれてからは順調に運ばれてしまいました。
惜しかったのはダブルスです。引退試合になる可能性もあったティプサレビッチと盟友トロイツキが奮起。タイの勝敗が決まっていながらも一切手を抜いてくれませんでした。
この日は前日から3試合目の内山、負傷のマクラクランがともに前日からパフォーマンスを落としました。試合順が逆だったら…と思えてなりません。
結果強制降格ルールはなかったので影響はなかったのですが*1決勝トーナメント進出を逃しただけでなく残留争いで後れを取ったショックが隠しきれませんでした…
その他のチームの話題です。
セルビアとフランスのグループA1位決定戦は、セルビアの勝利。日本戦で見せた試合の内容の差がそのまま出たようなタイでした。
モンフィスが不調と判断しペールを投入したフランスでしたが結果を出せませんでした。前年準優勝チームが予選リーグ敗退となりました。
死の組となったグループBはスペインとロシアが勝ち抜け。星を潰しあってグループから1チームしか勝ち上がれないのではと懸念されましたが、クロアチアが戦前の予想通りチリッチを欠いてはきつかった。チョリッチも他のグループなら2勝できたんでしょうが、ハチャノフナダルは相手としてやってないですね…前年覇者がまさかの6ラバー全敗での敗退となりました*2
グループCはチリが思ったより波乱を巻き起こせなかったなという印象です。シュトルフにファイナルセットタイブレークでなんとか勝った以外はすべてストレート負け。
これでラッキーだったのはアルゼンチン。ドイツに0-3ながらもチリにすべてストレート勝ちしたことが効いてタイ1-1、ラバー3-3の国が5つ(!)並んだ中でセット率1位。QFにコマを進めました。
ズベレフ出ないしドイツ厳しいかなと思ったんですが、今期大不振のコールシュライバーが2勝で貢献しました*3
グループDはオーストラリアが力を見せました。デミノー、キリオスが勝利。ダブルスでは棄権負けがあったものの(ベルギーが目無しになってから棄権した?)順当でした。ベルギーはデ杯に強いチームでしたが、ゴファンのシングルス連勝記録が12で止まりました。(この前に負けたのは、あのマレーとの2015決勝の試合までさかのぼる)
コロンビアは力が足りなかったかなと。
グループEは混戦予想でしたが、イギリスが総合力で押し切りました。
初戦のオランダ戦、Griekspoorがいいプレーを見せました。マレーから1stセットタイブレークを取ると、持ち前のビッグサーブを武器に強いテニスを見せます。
正直かなりマレー危ないと思うほど追い込んでいましたが、最後はマレーが底力を見せます。2時間半を超える激闘を制してイギリスに大きな1勝をもたらします。この結果が違えば、初戦を落としていたイギリスは一気にグループ最下位もあったかもしれません。それほど厳しい戦いでした。
グループFは前の記事にもまとめていますが、今大会を象徴するようなグループになりました。カナダが実質2人体制で2連勝しグループ首位で通過を決めました。が、連闘策で台所事情が厳しくなった結果、アメリカ戦の第3ラバーを「unavoidable hindrance」(やむを得ない障害)により途中棄権。さらにアメリカ×イタリアは決勝トーナメント進出の目がなくなったにもかかわらず、目の前のタイ勝利のために試合を行い、深夜4時決着。なんとも後味の悪い結果となりました。
QFからは一戦必勝となり負けられない戦いが続きました。
オーストラリア×カナダはキリオスの代打として今大会初登場となったミルマンが勝利を飾れず。デミノーがシャポバロフに勝ちダブルス決着へ。どちらもダブルスに強い2チームでしたが3タイ連続の連闘策となったポスピシル/シャポバロフに軍配。カナダがベスト4とシード権を獲得しました。
イギリス×ドイツはオランダ戦の代償で温存となってしまったマレーの分、シングルス2名が引っ張ります。ストレート勝ちで準決勝に進み、シード権確保。
ロシア×セルビアはロシアが大接戦を制しました。セルビアはジョコビッチが連闘策でダブルスに出たものの、ファイナルセットタイブレーク8-10で敗れます。
この試合でセルビアの次の試合がなくなったため、ティプサレビッチが現役引退。チーム全員で臨んだ記者会見が実質的な引退会見となりました。
Grab the tissues, this is an emotional one to watch 😢
— Davis Cup by Rakuten Madrid Finals (@DavisCupFinals) November 22, 2019
Hear from @nenadzim after Serbia's loss, describing his team as "The Golden Generation"
Thank you, Team Serbia 🇷🇸#DavisCupMadridFinals pic.twitter.com/jlHhxqTFht
ジモニッチ、ジョコビッチらが言葉に詰まりながらティプサレビッチについて語る引退会見は、今までの引退の仕方とは違った形になり、感動を与えました。
今後もシーズン最後の大会がデ杯ファイナルになる場合、ここを引退試合にする選手は出そうです。
スペイン×アルゼンチンは、ナダルが連闘でスペインの勝利。母国開催となったスペインがホームでの連勝を伸ばします。
準決勝はBIG4を抱えるチーム同士、Nextgenを中心とした若手のチーム同士の対戦となりました。
ロシア×カナダは好調ポスピシルをルブレフが止めましたが、シャポバロフがハチャノフとのエース対決を制してダブルスへ。前日のセルビア戦に続くファイナルセットタイブレークとなりましたが、この日制したのはカナダ。1913年以来106年ぶり(!)のデ杯決勝へコマを進めました。
スペイン×イギリスは協会がマドリードにいる英国人に無料でチケットを配布するという異例の措置がなされました。
🇬🇧 @jamie_murray has got a special message for you following the amazing response to our @DavisCupFinals ticket offer 👏#BackTheBrits 🇬🇧 pic.twitter.com/EauEyq909Z
— LTA (@the_LTA) November 23, 2019
スペインホームの大声援に対抗する形でしたが、やはりアウェーのような空気になりました。
試合はカレノ=ブスタの負傷によりロペスがシングルスに緊急登板。敗れてしまいナダル連闘。しかしそこを勝ち切るのがナダルです。7試合目となったダブルスでも活躍し連勝で決勝へ。
五輪の時もそうでしたが、国がかかった時のナダルは強い。単複同時進行でこなしても一切乱れが出ません。
決勝はスペインとナダル。
この日スペインにはあの男が帰ってきました、バウティスタ=アグーです。
父親の葬儀から明け、再びチームに合流したアグー。この大一番でシングルスに抜擢されました。
一方のカナダも負傷のためここまで1試合も使えていなかったアリアシムを投入。まさに最後の切り札です。
頂上決戦にふさわしい好カードはアグーの勝利。実質的にこれがスペインの優勝を決定づけたと言っていいでしょう。もちろん次の試合ではナダルがシャポバロフを完封。新デ杯の初代王者はスペインに決まりました。
I M P R E S I O N A N T E .
— Roberto BautistaAgut (@BautistaAgut) November 24, 2019
¡¡Vamos Españaaaaa!! 👊🏼🎾🇪🇸 pic.twitter.com/vprqUEgZ4G
今までの形式だと試合が完結するまで3日しかないため、何らかの理由で離脱した後また戻ってくるというケースはありませんでした。この点は新デ杯のいいところなのかもしれません。
ナダル「僕は(今大会)8試合勝ったけれど、このデ杯で決定的な存在だったのはロベルトだと心底思う。彼がやったことは人間離れしている、何と言ったらいいか、彼は僕の今後の人生における模範だ」 https://t.co/vHrcX4FlQM
— 井蛙堂 (@seiadoumogera) November 25, 2019
まさに獅子奮迅の活躍だったナダルは最高の形でシーズンを終えました。
33歳にして世界1位、GS優勝2つ、新デ杯初代王者。
これだけの偉業を成し遂げても、苦境からカムバックしたアグーを模範だと言い切りました。なんという王者のふるまいでしょうか。
ちなみにアグーは翌週、当初の予定通り結婚式を挙げました。おめでとうございます!
Roberto❤️Ana pic.twitter.com/mU8HqajNvc
— Roberto BautistaAgut (@BautistaAgut) November 30, 2019
色々と話題の絶えなかったデ杯ファイナルでしたが、やはりやってみたらやってみたでちゃんと物語がついてきたという印象でした。それでよかったのかどうかは分かりませんが。
前の記事でもまとめましたが、問題点は絶えません。抜本的な改革を再度行わない限り、このデビスカップは破綻するとみています。
皮肉なことに、ATPカップのルールはデビスカップと同じようなものになっています。1月にATPカップが終わった時に、チーム対抗戦全般に関してどんな論調になっているのか。デ杯の未来は明るくないという予想を今の時点で残しておきます。
新デ杯、大量に発生した新たな問題点
こんばんは。
今日は新ルールになって起きた新たな問題点を振り返りながら、改善方法を検討していきたいと思います。
・6ラバー決着は少なすぎでは?
今回のデ杯ファイナルから、シングルス2ダブルス1の3本2先取ルールに変わりました。
デビスカップは少しずつ時間短縮の方向にルール改正が進んでいましたが、それでもシングルス4ダブルス1の5本3先取ルールだけはずっと変わらないルールでした。
5本3先取のリバースシングルスは、初日の結果が3日目に影響します。特に自国2番手が相手国1番手を削るという要素があったため、勝負に行くなら勝負、相手関係では適度に捨てシングルスも存在しつつ、5試合秩序だって行われているという点がとてもよく機能していました。
ところが今大会は、3ヶ国の予選リーグで各組1位+各組2位のうちよかった2チームがベスト8に進出というルールに変わり、タイの勝敗が決まった後のダブルス、いわゆるデッドラバーが事実上デッドラバーではなくなりました。
以前デ杯ファイナルについて解説した記事でも書きましたが、ラバー勝率が最終順位に大きく影響するため、1ラバーすらも落とせない状況なのに、予選リーグでは2つのタイしか試合がないため、全6試合(ラバー)しかないのです。
実際、各組2位のチームの比較を見ると
ラバー セット 総合順位
A フラン 3-3 6-7 12
B ロシア 4-2 8-6 7
C アルゼ 3-3 8-6 8
D ベルギ 3-3 7-7 9
E カザフ 3-3 7-7 10
F アメリ 3-3 7-8 11
※ベルギーとカザフスタンはゲーム率で決定
と、たった1ラバー、それどころか1セットが勝敗を分けたことがよくわかると思います。
これはいわゆる「目無し問題」に対応したためで、それ自体はよく理解できるのですが、本当にぎりぎりまでほとんどのチームが「目あり」になってしまったため、一切手が抜けなくなり、2勝してタイを取ったチームですらダブルスで手が抜けないという事情が発生しました。
それを含めても、たった6試合で決まってしまうのはあっという間すぎるし、初戦を落としたチームが挽回することが非常に困難でした。イタリア、クロアチアがこれにあたります。
1試合捨てても確実に3-1で勝つみたいなゲ-ムプランが組めなくなりました。
・負担減はどこへ 度重なる連闘策とけが
新デ杯ルールの最大のメリットは「1年間に集まる回数と、試合時間が減る」ことによる選手側への負担減と見られていました。以前にルール記事でも解説したように、デ杯で優勝するために必要な拘束日数は4週間から2週間に減り、予選ラウンドに出なくていい年(前年ベスト4orWC)だと1年に1回、1週間だけです。
しかし、その1週間に大きな負担がのしかかる結果となりました。
まず開催時期が問題。例年パリが終われば選手はオフシーズンに入り、NAFとデ杯決勝出場選手という限られた人以外は休暇を取ることができました。10ヶ月間働きっぱなしのテニス選手にとってはつかの間のオフです。1ヶ月バカンス、1ヶ月トレーニング。これでも足りないかもしれません。
それが多くのトップ選手に、11月4週までスケジュールを拘束させる結果となりました。
パリの頃のATPツアーはみんな疲れ切っています。フレッシュな選手はどこにもいません。ある意味けがと隣り合わせになっているこの時期に、さらに1ヶ月シーズンが伸びたことは致命傷で、実際けがが相次ぎました。
分かりやすかったのはカナダです。出場メンバー4人で構成されていたのが、まずラオニッチがけがで欠場。さらにアリアシムがパリで負傷し、メンバーに帯同するも終盤まで使うことができませんでした。
ラオニッチの代わり呼んだシュナーも負傷で結局登場せず、ポスピシルとシャポバロフがひたすら出続けるという深刻な事態に。アメリカ戦でwalkoverを選択することとなり波紋を呼びました。
スペインも優勝したものの、かなりの自転車操業でした。
アグーが父親の葬儀のため緊急離脱することになり、4人に。シングルスをナダルとカレノ=ブスタで回していましたが、カレノ=ブスタが負傷。ロペスがシングルスに出てくる緊急事態。
さらにナダルがダブルスに連闘し、5つのタイでのべ8試合を戦い全て勝利という獅子奮迅の活躍でしたが、これはナダルだからできる芸当で、普通はけがします。並の人間が真似してはいけないやり方です。
今回決勝に進んだ2チームがこの状況で、ベスト4のロシアもハチャノフとルブレフの二人でずっと回していましたから、根本的に破綻していると言わざるを得ません。
現実的には、連闘に対して出場制限をかけるようなルール改正をしないと選手が壊れます。これは長続きしないなという感想です。
・一都市集中開催の弊害、7時間問題
これはツイキャスで放送していた初日から私が指摘していた問題なのですが、午前セッションから午後セッションまでの時間が7時間しかないという問題です。
具体的には、午前に行われるセッションが11時開始、午後に行われるセッションが18時開始になっています。
先述の通り目無し問題を解消するために必ず3試合が消化されるルールになっています。そしてダブルスはノーアドではなく、デュースあり、3セット目もマッチタイブレークではなく普通にやるルールです。
ここでテニスを普段から見られているみなさんならもう結論が分かると思います。はい。7時間で3試合が確実に終わるわけがありません。ましてやポイント間が長くなりがちなデ杯でです。
もっと言うと、ダブルスにシングルス2の選手が連闘する場合、適切な休憩時間が設けられたり、第1試合と第2試合の間のお客さんの入れ替え時間/室内清掃時間もこの7時間の中に含まれます。
その結果がイタリア×アメリカの4時決着をもたらしました。
この日の午前セッションではアルゼンチン×ドイツの試合が行われ、ダブルスの試合では3セットともタイブレーク、さらにファイナルセットのタイブレークスコアは20-18という大熱戦に。当然7時間で終わるわけもなく、イタリア×アメリカの試合は遅れて開始します。この試合はタイスコア0勝1敗同士。そしてシングルスを分け合った段階で、実は決勝トーナメントへ向けては目無しになりました。しかし、デ杯チームポイントやタイ勝敗の記録に残るため、ダブルスでは本気でぶつかり合い、そして4時決着となりました。
仮に8時間ずつの16時間かかったとしても午前3時決着になりますから、いかに無謀な時間設定か分かると思います。
一都市で集中的に開催し、試合を詰め込んだ結果選手たちはかなりつらい日程で戦っています。本末転倒と言わざるを得ません。
・ホーム&アウェーの消失、消えた観客
スペイン戦ではない試合では毎試合空席。これが全てです。
ちょうどラグビーワールドカップを観戦した私が感じたこととしては、ラグビーワールドカップを日本に見に来た外国人ファンは、そのまま1ヶ月間滞在し、ひいきのチームの試合を中心に何でも見ながらついでに日本を観光して帰るというスタイルを取っている人が多かったです。
事実、私が見に行った準決勝は各国のファンごとに固まっていて、白(赤)いチームと黒いチームの対戦だったのに、黄色とか緑とかのジャージーを着た人がたくさんいました。*1彼らは自国の選手の応援ではなく、ラグビー自体を楽しみに来ているのです。
デ杯運営側も、そんな風にテニスファンが1週間ずっと滞在して、各国の試合を見るような形に変えていきたいんだろうなあという意図は伝わりました。が、旧デ杯で100年やってきた立場からすると、中立地で他の国の試合をわざわざ見たいか?と言うと、正直うーーーーーーーーーーーーーーーーーんです。(長棒の長さから汲み取ってください)
エルベールが記者会見でコメントしていますが、国歌斉唱で選手の声が聞こえるなんてこれまでは絶対にありえなかったことです。
フランス応援団は今回の改革を機に遠征をボイコットしています。また遠隔地の応援団では人が集まらなかったという台所事情も聞いています。
テニス・ナショナリズムとでもいうべき特別な空気感が支配していたこれまでのデ杯会場。それはなくなったという事実が突きつけられた今年のファイナルでした。
こういった諸問題が新たに発生し、一方でプラスになった面はほとんどなかったように思います。というか負担減が目的だったはずなのに負担が増えているのだからそれは当然。
マレーは記者会見で「最初から批判するのは間違っている。チャンスをあげるべきでは」というコメントをしています。これ自体は確かに正論なのですが、残念なことに今のままでは来年以降もこの諸問題は解決できないのではと思います。
1日に2セッションをやる限りは7時間問題は解消されませんし、このグループ方式を変更する場合、またWG入れ替え戦付近での大きな組織変更が行われ、最後のタイの結果と関係ないランキング順で再度グループを組みなおすような操作が行われます*2結局、抜本的にもう一度見直さない限り厳しいと思います。
すでに立ち上がったばかりのATPカップとの統合案や、ファイナルを9月に移設するという案も出てきています。デビスカップ、ATPカップ、レーバーカップが乱立している2019年。いずれは統合の方向に向かうことになるとは思うのですが、ITFとATPが仲悪かったりポイントの配分だったり色々と解決しなければいけない問題が山積していて、10年単位の時間がかかるのかなあと思っています。
2週間かけて全米後の9月にファイナルをやるのが現実的なのかなあと。できたばかりですがATPカップとレーバーカップを廃止して、予選ラウンドを1日1セッションにすれば比較的負担も楽。早期敗退ならアジアまで軽く休める。これが私の今のところの考えなのですが、越えなければいけない壁が多すぎる…
何よりプレイヤーファーストであってほしいのですが、果たしてうまくいくのか。必要であればファンからも声を上げていく必要があるのではないでしょうか。
abematvがATPカップ全試合中継を決定
驚きました。
AbemaTVが2020年のATPカップ全129試合を完全中継することが発表されました。
AbemaTVについて詳しくない人もいると思うので説明します。
AbemaTVはテレビ局を母体としない放送媒体で、スマートフォンアプリやwebで見ることができます。実業家の藤田晋氏が束ねるサイバーエージェントのグループ会社で、系列にはアメーバブログ、ソーシャルゲームのcygamesなどがあります。また最近ではJリーグの町田ゼルビアのオーナー企業になったことでも知られています。
サイバーエージェント系列企業と意識しなくても、意外なところでお世話になっているのではないでしょうか。
AbemaTVでは現在、20以上のチャンネルが24時間放送されています。
ジャンルごとにチャンネル分けされていて、将棋、麻雀、釣り、海外スポーツといったジャンルからヒップホップ、アニメ、韓流ドラマ、ニュース番組まで幅広いジャンルのチャンネルが開かれています。
印象としては、少しニッチな分野に強いという印象です。
基本は録画放送の垂れ流しで、注目される放送がある場合のみライブ配信という形をとっています。
例えば麻雀チャンネルでは、月火木金の19時からプロリーグ「Mリーグ」を放送し、深夜やお昼は昔の大会の映像を垂れ流ししています。
Mリーグのことは以前記事にしたのでこちらもどうぞ。
出演タレントもテレビ業界から干されたり都合で出れないタレントを起用したり、全体的にテレビができないことを積極的にやっている媒体だなと思います。(例.新しい地図、みのもんた)
AbemaTVは原則無料。アプリで放送を見るだけならお金は1円もかかりません。ただし、タイムシフトや高画質視聴などの機能を充実させるためのプレミアム会員制度もあります。
将棋の藤井七段の対局中継など、一部コンテンツでは無料でタイムシフトもできますが限定的。ATPカップが無料でもできるかどうかは、放送が近くならないと分からない可能性があり、あまり期待しない方がいいかなと思います。
正直試合が多すぎるので、1ヶ月だけプレミアム会員になってタイムシフトでのんびり見るのもいいのかもしれません(私はそうするつもりです)。
あと今までプレミアム会員になったことがない人は、無料トライアル期間があるので、入ってATPカップが終わってすぐ退会すれば2020年は0円で済みます。*12021年以降もabematvなら、その時はお金払わないといけないですけどね…
AbemaTVの制作の方に確認してみたところ
・3チャンネルで会場別にチャンネルを割り当て、試合をすべて流す
・実況解説はつけたい
・まだ公開できない動画や企画を準備している
・テニス中継は初めてだが、無料放送を活かして新しい視聴層に手軽にテニスが見れる環境を届けたい
とおっしゃっていました。
まだ不安なテニスファンもいらっしゃるかもしれませんが、私が担当の方から聞いた感じではノウハウがないなりにかなり準備していらっしゃる様子だったので、期待していいのかなと思います。
個人的にはスポーツ中継の放送形態だと、DAZNがJリーグに参入した以来の衝撃なので、既存のテニス中継の概念を壊してほしいなと思います*2
デ杯チームランキングの計算方法について(2019新制度対応)
※重要なお知らせ
2020年3月のランキングシステム改定により、この記事で説明されている方式は2019年限定ルールであることが判明いたしました。
2020年以降の恒久的なルールについては新しく公開される記事を参考にしてください。
また、2020年3月のタイの付近で発表したランキングの情報は全てこの記事のルールに基づくものでした。避けようがなかったのですが、間違った情報を流してしまい大変申し訳ありませんでした。
こんばんは。
というわけでデ杯チームランキング試算です。
本当は今年のファイナル終了前に間に合わせたかったのですが、時間の関係上間に合わなかったので計算方法の解説と、実際の運用状況を解説する記事となりました。新制度1年目で計算ミスも多くなることが想定されたので、実際の結果を見れたのは少し助かりました。
この記事を読み進める前に、その前の新制度についての記事を読んでいない人は
http://twosetdown.hatenablog.com/entry/2019/11/23/151402
こちらから読み進めることを推奨します。
そもそもデ杯チームランキングは、デ杯公式から発表している各国のデ杯成績をもとにしたチームランキングです。ATPランキングとは一切関係ありません。
2018年までの旧フォーマットでもチームランキングが存在し、私が必死こいて試算した記録が残っています。
しかし2019年の新デ杯から、戦う形式が変わったので当然ランキング計算方法も変わります。
2019年ファイナルの組み分けを抽選する際には、突然改訂されたランキングが発表され、微妙に順位が変わっている事象が確認されたので個人的には大混乱しました。
が、今回の新ルールになってとてもありがたいことが一つあります。
ATPで言うところの「rankings breakdown」に相当するポイント内訳が見れるようになりました!!!
今までは4年間かけてじわじわと減っていくポイントを、各種ボーナスポイント込みで計算していたので、一種の連立方程式を解いているような感覚でした*1
しかしこれによって、私のこの後の説明を聞けば誰でもランキング試算ができます!!!
いやしないですよね。
今でこそATPランキングはノウハウがあれば計算できるし、してる人増えたんですけどデ杯はたぶん誰もやらないでしょうね…
しかも、使いどころが少なくなるのでますます需要ない…
しかし誰かがやらないといけない。私は色々思うところありましたが、新デ杯もなんとか船出となったので、引き続き見ていこうと思います。デ杯大会の感想については別記事で。
というわけで、デ杯チームランキングの計算方法を解説していきます。
まず、今回のデ杯チームランキングで重要なのは、ランキングの更新が主に年4回→2回になることです。
旧ルールでは、年間4回のタイ(WG1R、WGQF、WGSF/入れ替え戦、WG決勝)が終わるごとにランキングを更新し、新たにドロー抽選する場合にはそのランキングを使ってシードなどを決めていました。
しかし新ルールでは、各国年間に2つの週しか参加しなくなります。具体的にはqualifierタイ(予選ラウンド/WG入れ替え戦)とファイナル/WGタイです(夏~秋の時期)。
WG1とWG2(以下この略称で行きます)が全米後、3以下のグループは任意の時期、ファイナルは11月と開催時期がまちまちですが、この都度ランキングを更新するのかどうかは来年の運用を見て確認します。今の段階では不明です*2
というわけで、年間にやる試合の数が減るためチーム1勝の比重が以前より大きくなります。それを是正するために、新ルールでの計算方法は大きな変更点が加えられています。
まず、新ルールでのランキングは引き続き4年間の成績をポイント化して、傾斜をつけて合計する方法です。これは旧ルールと同じ思想です。
具体的には
qualifierタイ後…(quaifierタイのポイント)+(1年前のシーズンのポイント)+(2年前のシーズンのポイント)×0.75+(3年前のシーズンのポイント)×0.50+(4年前のシーズンのポイント)×0.25
ファイナル後…(その年のシーズンのポイント)+(1年前のシーズンのポイント)×0.75+(2年前のシーズンのポイント)×0.5+(3年前のシーズンのポイント)×0.25
こう書くと分かりにくいですが、ポイントの増減で見ると
ファイナル→qualifierタイ…qualifierタイのポイントを足すだけ
qualifierタイ→ファイナル…1~4年前のポイントが25%ずつ減、ファイナルのポイントを足す
となります。
なお、2018年以前のポイントについては、今の制度との互換性を取るため、ポイントが10分の1になります。*3
成績をポイント化する際に出てくるファクターは
S…ステージポイント
W…勝利ボーナス
R…ランクボーナス
A…アウェーボーナス
の4つです。下の3つについては旧ルールの計算方法を知っている人であればピンとくると思います。順に解説していきます。
旧ルールでは、どの位置にいようと、タイに勝たないとポイントが入らない仕組みになっていました。例えばWG1回戦で2-3、WG入れ替え戦で2-3で敗れた国があった場合、その国が1年間に稼いだポイントは0です。どれだけ僅差でも0になります。2012年の日本の結果なんですけどねこれ。
しかし新ルールではこういうことをしていると、現実の実力とポイントの関係がばらつく可能性が高くなります。また、ファイナルでは最大5タイあるので、そこと入れ替え戦勢とのポイントの適切な分布が求められるようになりました。そこで、各グループ帯に所属しているだけで入るポイント、「ステージポイント」が新設されました。これが今回の改正のミソです。2019年以降は、1年間デ杯のタイで勝てなくても、必ずポイントが入るようになります。
ステージポイントは、本番の夏~秋のタイの時に、どこのグループに所属していたかで自動的に入るポイントです。ポイントは以下のように入ります。(一部抜粋)
ファイナル決勝 300
ファイナルSF 200
ファイナルQF 150
ファイナルリーグ戦 100
WG1 50
WG2 40*4
なお、ファイナルの決勝トーナメントに進んだ場合は、ポイントを足していくのではなく、最高到達したラウンドのポイントのみが加算されます。例えばベスト4で終わったイギリスの今年のステージポイントは、200+150+100ではなく、200ポイントです。
次に勝利ボーナスですが、タイに勝利した時に加算されるボーナスです。
ただし、加点対象のグレードは限られていて
WG決勝 200
WG1 10
WG2 10
のみです。
つまり、qualifierタイでは、どの国も勝利ボーナスはありません。
これでいいの?がばがばでは?と思われそうですが、これで大丈夫です。
qualifierタイの勝利に対する評価は、ランクボーナスと、ステージポイントに含まれています。
結局、予選ラウンドで勝った場合ファイナルに昇格、負けた場合はWG1に降格することになりますが、そうなるとステージポイントが50違います。qualifierタイで勝利した分の加味は勝った段階ではなく、その年のステージポイントで評価されています。
同様に、ファイナルの勝利ボーナスは決勝のみですが、例えばQFとSFの国の違いもちゃんとステージポイントで評価されています。
ただし、ステージポイントだけだとスペイン(優勝)とカナダ(準優勝)の差をつけるポイントがありません。なので、WG決勝の勝利だけ200ポイントという大きな勝利ボーナスが入っているのです*5
次にランクボーナスですが、これも旧ルールと変わりました。
旧ルールでは、自分のランキングより相手のランキングの方が上だった場合にランクボーナスが適用されるというものでした。
例えば、33位の国が32位の国に勝つと適用されますが、31位の国が32位の国に勝つと適用されないという超がばがばルールでした…
そうではなく、とにかく世界上位相手に勝てば一律でボーナスポイントがつくルールになったので、よりよい改正だと思います。また、qualifierタイに勝った場合にも適用されるので、その勝利の評価の意味合いもあります*6
対戦相手のランキングに応じて
1-2 10
3-4 9
5-8 8
9-16 7
17-32 6
33-64 5
65位以下 4
ポイントが加算されます。
最後にアウェーボーナスです。
ホーム&アウェーのルールが適用されているのは、予選ラウンド、WG1、WG1プレーオフ、WG2、WG2プレーオフです。
しかしこのアウェーボーナスは、予選ラウンド、WG1、WG2にのみ適用されるようで、WG1プレーオフとWG2プレーオフには適用されないようです。
これは「同一年に2回アウェーボーナスが取れないようなルールになっている」(The format of the competition prevents Nations from winning two away ties in a year.)という記述があることから、事実関係を考えると間違いなさそうです。
アウェーボーナスは、A=0.25×(S+W+R)と、勝ったタイの評価に対して1.25倍するような追加分のポイントとなります。qualifierタイにはステージポイントがありませんが、特例で80ポイントを代入します。
ということで、以上のことが分かれば原理的には全ての国のランキングポイントを計算できます!!!やったね!!!
って、んなわけあるかああああああああああああああ
新しいことだらけで訳が分からないですよね。私もそう思います。
というわけで、試算も間に合わなかったので、今回は実際に各国のランキングポイントを見ていきながら、こんな風に計算するのかなという感覚を掴んでもらうことに終始したいと思います。
分かりやすいところから行きましょう。日本です。
計算式は、ファイナル後の場合、(その年のシーズンのポイント)+(1年前のシーズンのポイント)×0.75+(2年前のシーズンのポイント)×0.5+(3年前のシーズンのポイント)×0.25
ですが、便宜上各年ごとに獲得したポイントをP2019 P2018のように文字で置き換えると
ファイナル後のポイント=P2019+P2018×0.75+P2017×0.5+P2016×0.25
となります。
日本のP2018=100
日本のP2017=100
日本のP2016=100
全部WG1R負け+入れ替え戦ホームで勝利なので、3年連続旧ルールで1000ポイント。10分の1に圧縮されるので100ポイントずつです。
2019年
予選ラウンド 中国アウェー勝利
ファイナル リーグ戦 フランス敗北 セルビア敗北
予選ラウンドはまず中国に勝利してランクボーナス6が入ります。
さらに、アウェーで勝ったのでアウェーボーナスをS=80で計算、勝利ボーナスは0なので、(80+0+6)×0.25=21.5
したがって、6+21.5=27.5ポイントがこのタイで獲得したポイントです。
ファイナルは予選リーグ敗退で、ステージポイント100が加算。さらに、ランクボーナスは0、勝利ボーナスとアウェーボーナスはそもそもファイナルでは適用されないので、100ポイントがファイナルで獲得したポイント。
したがって、日本のトータルポイントは
(27.5+100)+(100×0.75)+(100×0.5)+(100×0.25)=277.5
となります。
次にファイナルベスト4のロシアを見てみましょう。
ロシアのP2018=32
ロシアのP2017=0
ロシアのP2016=209
2016年は、ゾーングループ1から3連勝。入れ替え戦も勝ってランクボーナス付きで2090ポイントを獲得、圧縮されて209ポイント。2017年はWGも入れ替え戦も敗れて0。2018年は降格を回避する1勝で320ポイントを獲得、圧縮されて32ポイントです。日本と同じく、全部WG1R負け+入れ替え戦ホームで勝利なので、3年連続旧ルールで1000ポイント。10分の1に圧縮されるので100ポイントずつです。
2019年
予選ラウンド アウェーでスイスに勝利
ファイナル リーグ戦 クロアチアに勝利 スペインに敗戦 QFでセルビアに勝利 SFでカナダに敗戦
予選ラウンドではまずスイスに勝利してランクボーナス6が入ります。
さらに、アウェーで勝ったのでアウェーボーナスをS=80で計算、勝利ボーナスは0なので、(80+0+6)×0.25=21.5
したがって、6+21.5=27.5ポイントがこのタイで獲得したポイントです。※日本の計算方法と全く同じ
さて次のファイナルが複雑ですね。これをしっかり見ていきましょう。
まず、ステージポイントはベスト4でしたので200ポイントです。
ランクボーナスは勝ったタイにのみ適用されます。クロアチア、セルビアが相手でそれぞれ10,8ポイント入ります。クロアチアは2位だったので、ルール上最大の10ポイントです。
勝利ボーナス、アウェーボーナスはありませんので、0ポイント。これらを合計して218ポイントがファイナルでの獲得ポイントです。
したがって、ロシアのトータルポイントは
(27.5+218)+(32×0.75)+(0×0.5)+(209×0.25)=321.75
となります。
最後に今年の優勝国、スペインです。
スペインのP2018=609
スペインのP2017=261.25
スペインのP2016=200
2016年は、ゾーングループ1から2連勝。1600ポイントですがアウェーボーナスにより2000ポイントを獲得、圧縮されて200ポイント。2017年はWG1Rがアウェー勝利+ランクボーナス付きだったため2612.5ポイントと少し小数点が煩雑な結果に、圧縮されて261.25ポイント。2018年はホーム連続勝利+ランクボーナス1回で6090ポイントを獲得、圧縮されて609ポイントです。
2019年
ファイナル リーグ戦 ロシアに勝利 クロアチアに勝利 QFでアルゼンチンに勝利 SFでイギリスに勝利 決勝でカナダに勝利
予選ラウンドは免除されています。
ファイナルを見ていきましょう。
まず、ステージポイントは決勝でしたので300ポイントです。
ランクボーナスは勝った5つのタイに適用されます。ロシアが6、クロアチアが10、アルゼンチンが9、イギリスが8、カナダが7です。
勝利ボーナスは決勝で勝った際の200ポイント。アウェーボーナスはありませんので0ポイント。これらを合計して300+6+10+9+8+7+200=540ポイントがファイナルでの獲得ポイントです。
したがって、スペインのトータルポイントは
540+(609×0.75)+(261.25×0.5)+(200×0.25)=1177.375
となります。ただし、小数点3桁目以下は四捨五入するので、1177.38ポイントが正しいスペインのランキングポイントです。
小数点以下を四捨五入しないといけないのは、ただでさえ旧ルールで小数点のポイントになっていたものをさらに10分の1に圧縮してしまったからで、なら新ルールのポイントを全部10倍にすればよかったのでは…と思います。
いかがでしたでしょうか?まあ複雑ですよね。自分でやりたくないですよね。でも私は計算しますし、いくつかまだ今の段階で分かっていないルール以外は全部把握したので、一応2020年からは試算できます。
2020年3月までこの記事のことをひっそりと覚えていてもらえたら嬉しいです。
*1:実際そうで、予想される相手のランキングを見積もったうえで、各時期に撮った魚拓(wayback machine)と照らし合わせてそれが妥当かどうかを検証し続ける作業でした
*2:インド×パキスタンの結果を踏まえて12月にランキングを更新していることから考えると、都度更新するのか?
*3:および、小数点第3位を四捨五入しているが、めんどくさいので脚注へ
*4:WG3も40ポイントとされているが、実際は30ポイントっぽい。WG3以下のグレードのポイントはrankings explainedに書かれている数字と、実際に入ったポイントが違うので、どちらが正しいのか不明…移行年だから特別ルールなのか?
*5:だったら初めからWG優勝のステージポイントを500にすればいいだけなのでは?と思うのですが、何の違いが生まれるのか私にはわかりませんでした…
*6:ただし、2019年は制度移行年のため、qualifierタイに相当する試合が予選ラウンドしかなかったため、WG1プレーオフ、WG2プレーオフで勝った場合にもランクボーナスが適用されるかは、2020年の結果が出ないと分からない
2019ATPファイナルズ 感想
こんばんは。
NAF決勝と大会を振り返って記事を書くぞ!Numberwebに寄稿だ!と思って書いたんですけど、既に他の方が書かれていたので、テーマ被りということでボツとになってしまいました…
でも結構いい感じに書けたので、どこにも公開しないのはもったいないなということで、ここに公開します。
普段のブログだと、とりあえず書きなぐって最低限のミスだけなくしてから公開という風にしているんですが(時間取ってられないから)、Numberwebではそうはいかないので、推敲に推敲を重ねてから出しています。普段と同じブログ形式の画面で見ると、差がそこだけになるので、その辺の違いも感じ取ってもらえたらなと思います。
あっという間のビッグタイトルだった。
今年の年間最終戦、日東ATPファイナルズを制したのは、21歳のステファノス・チチパス(ギリシャ)。昨年のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)に続いて「ネクストジェネレーション」が優勝カップを持ち帰ることになった。
高年齢化が続いていた男子テニス界だが、ここ数年は一気に若返りが進んできた。以前は20歳前後の選手でもトップ10に入ることは当たり前だった。事実、2000年から2009年までは、10年中9年で21歳以下の選手がトップ10でシーズンを終えている。しかし2010年から2016年までの7年間は、1人もトップ10に入らなかった。若手不作の時代と言えるかもしれない。
その流れが変わったのが2017年。ズベレフがマスターズを優勝し、20歳でトップ10に入った。今年に入ってチチパスが20歳でトップ10入り。
最近の高年齢化には様々な要因があるだろうが、傑出した才能があれば本来早い年齢から活躍できてもおかしくないのだ。ようやく通常のサイクルに戻ったと言っていいだろう。
3年前、チチパスは今回と同じロンドンの会場にいた。
ATPファイナルズでは毎年、ジュニアの有望株をトップ8の練習相手として招待している。先日の決勝で戦ったドミニク・ティーム(オーストリア)と、実はこの時練習していたのだ。
2年前、チチパスは楽天ジャパンオープンの「予選」を戦っていた。
親戚に日本人がいる親日家として、日本でのファンを獲得した大会だった。直後に初めてトップ100に入る、まだそんな時期だった。
1年前、チチパスはマスターズで準優勝。21歳以下の大会、ネクストジェネレーションファイナルで優勝した。
そして今年、チチパスは全豪オープンベスト4、トップ10入り、ATPファイナルズ優勝。
目にも止まらぬ速さで指数関数的に飛躍している、そんなここまでのキャリアだ。
こないだまで目の前でプレーを見れた選手が、ツアーを引っ張るスターになった。彼はもうネクストジェネレーションではなく、立派なトップ選手なのだ。
まず驚かされたのはラウンドロビン最終戦のラファエル・ナダル(スペイン)戦だった。押される展開が続いたものの、ブレークポイントで1stサーブを立て続けに決めてピンチを脱した。まるでロジャー・フェデラー(スイス)のようだった。2時間50分を超える死闘の末敗れはしたものの、勝っていても不思議ではなかった。
それから21時間後の準決勝、憧れのフェデラーとの対戦でも勝負強さが光った。立ち上がりのフェデラーのスマッシュミスを逃さずブレークに成功すると、再三のピンチを迎える試合となったが動じなかった。ブレークポイントを12回中11回凌ぐ姿は、どちらがフェデラーなのか分からなくなるほどだった。
これを2日連続で、この大舞台でやり遂げる21歳がいる。BIG4時代の感覚でいると、事態を呑み込めないほどだ。
そのまま決勝でも優勝。ティームの猛攻を受けながら勝ち切った。近年稀に見る好ゲームだったが、ほとんど崩れる時間帯はなかった。キャリアでも最大のプレッシャーがかかりそうな場面だが、この男には関係なかったのかもしれない。
準決勝でチチパスがフェデラーに勝った試合の直後、あるセレモニーが行われた。今年はトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)やダビド・フェレール(スペイン)ら、BIG4時代を長く戦い、ついにグランドスラムに手が届かなかった名手たちの引退が相次いだ。その選手たちが一堂に集まり、最終戦の舞台で功績を讃える特別なセレモニー。一番近くのベンチで見届けたのは、試合を終えたばかりのチチパスだった。
世代交代という事実を感じさせる、象徴的な時間だった。
つい数ヶ月前の男子テニスの話題は、ダニール・メドベデフ(ロシア)のことで持ちきりだった。6大会連続決勝進出、全米OP準優勝、マスターズ2勝という離れ業をやってのけ、一気に世代の先頭に立った。次の全豪オープンはこの人だという声もあったが、4連敗でシーズン終了。そう簡単にはいかなかった。
一方チチパスは今年の夏場に苦しんでいた。公式戦で2ヶ月間勝利から遠ざかった。
ATPファイナルズの結果を受けてチチパスを次世代王者と予想するのは簡単なことだが、数ヶ月前はその世論が違ったように、まだまだ分からない。
世代交代は一人でするものではない。20代前半の前途有望な若者たちが束になって既存勢力にかかっていく様子は、これまでのどの世代よりも世代交代の可能性を感じさせてくれている。
毎年のように年末には「来年はBIG4以外の新たなグランドスラム優勝者が出る」と期待が高まるものの、終わってみればBIG4やその世代がグランドスラムを総ナメする年が続いてきた。
相変わらずレジェンドとしての力をいかんなく発揮しているが、以前に比べて隙も多く見えるようになってきた。グランドスラムは特別な環境で、BIG4が跳ね返す可能性もあるが、ついに今年の全米OPではメドベデフが決勝の門を叩いた。こうなると他の選手も一気に殺到してくるだろう。何せ今の若手は成長スピードが速く、まだ伸びしろがある。まばたきしているとあっという間に置いていかれる。
BIG4時代という常識外の出来事が続いた魔法は、もう間もなく解ける。その先には何が待っているのか、2020年のテニスシーズンからも目が離せない。
という感じです。これでだいたい私が投稿している平均字数くらいです。
色々解説したいところはあるのですが一点だけ。
「高年齢化が続いていた男子テニス界だが、ここ数年は一気に若返りが進んできた。以前は20歳前後の選手でもトップ10に入ることは当たり前だった。事実、2000年から2009年までは、10年中9年で21歳以下の選手がトップ10でシーズンを終えている。しかし2010年から2016年までの7年間は、1人もトップ10に入らなかった。若手不作の時代と言えるかもしれない。」
はい、このブログを読んでいる方ならもう分かりますね。閑話球題2019に出てきた部分です。こんな感じでさらっと紹介されるデータを掘り下げると、あんなブログ記事ができます。
デ杯も終わったんでまた閑話球題も更新していきます。そちらもお楽しみに。
2020デビスカップ予選ラウンド、日本はエクアドルとホームで決定
日曜日夜にデ杯2020予選ラウンドの抽選があり、日本はエクアドルとホームで対戦することが決まりました。
その他の対戦カードはこちらです。
This is what the draw looks like for the 2020 #DavisCup #ByRakuten qualifiers pic.twitter.com/SzFb8AFej7
— Davis Cup (@DavisCup) November 24, 2019
旧制度からの移行年だった昨年とは異なり、今年はシード国が比較的有利かなと思われます。
この辺はまた3月にも解説したいと思いますので省略。
日本はエクアドルとの対戦が決まりました。
対戦国については12チームの可能性がありましたが、その中では比較的というか、かなりやりやすい相手になった印象です。
今回の抽選対象の国は
・アジアが全てアウェー確定
・チリとコロンビアがホームだが強そう
・欧州も、粒揃いの選手が集まっていて油断ならない
と、日本優勢ではあるものの、デ杯の魔物が作用すれば危険という国が多かったです。
そして11番目に抽選される日本の対戦相手。残っていたのはチリとエクアドルで、8割方チリだと思っていました*1
しかし引かれたのはエクアドル。ライブで見ていた私も変な声が出ました。
エクアドルはゾーン1でベネズエラに勝って予選ラウンドへ上がってきました。エクアドルの近年はゾーン1で安定。ブラジルには敗れるも、他の国にはそこそこの勝率を維持しながら位置をキープしています。
過去にはラペンティが全盛期の頃に、WGにいた時期もありました。
メンバーは150位付近にいるゴメスがエース。250位付近のキロスが2番手。トップ1000に5人しかいない少数精鋭のチームです。
760位付近にいるマーチという選手が19歳なので注意か。今年はデッドラバーに出ていますし、日本戦では意表をついて使ってくるかもしれません。
しかし、この5人を合わせてもチャレンジャータイトルの合計は1。これといったダブルスのスペシャリストも不在で、今回ばかりは格の差があると正直に申し上げたいと思います*2
日本戦の場所はこれからJTAが決定しますが、エクアドルという中米相手かつ日本の伝統的なコート選定の傾向から、間違いなくハードコートでしょう。そして、出場するであろう錦織に五輪前に経験を積んでもらうためという目的もあって、改修した有明でやるのが本命とみています。
ただし、有明はまだ五輪仕様に完成したわけではないので(ショーコート2の建設中)、何らかの支障が出るようであれば、その場合のみ地方へ行くことになりそうです。靭か北九州になるのでは。
日本チームはまず錦織が出場するでしょう。これは五輪出場要件の「五輪から直近2年のどちらかの年にデ杯に出場する」を満たすためです。厳密には絶対条件ではないですが、要件を満たさない裏ルートを食いつぶす形にはしないと思います(フェデラーがその裏ルートを使う可能性が高いため)。この辺はまた別の記事で解説します。
その他は西岡、ダニエル、杉田のうち調子のいい2人と内山、マクラクランになりそうです。ベストメンバーです。
方式は2019年予選ラウンドと同じで、2日間に分けてシングルス4試合、ダブルス1試合の5試合を行います。旧デ杯と同じリバースシングルス形式です(2人ずつ総当たりで4試合)。ただし3セットマッチになっているため、波乱には要注意。
会場誘致、チケット販売とスムーズに行う必要がありますが、とにかく多くの人に集まってほしい。
楽天OPも五輪も当たらない!プロのテニスを見ることが困難になってきている今、デ杯は比較的取りやすいと思われます。
いや錦織出るから違うでしょと言われるかもしれませんが、たぶん今回はあまり気付いていない人が多いと思われます。錦織自体の報道もけがで過小気味。売り切れ必至になるとはあまり思っていません。そもそもデ杯だと行かない人もいるくらいだし…
世界最高峰のテニスを数十倍/数百倍の倍率で戦わなくても簡単に見れるチャンスです。*3
最近感覚がマヒしてきてるんですけど、1万人+グラウンドパスを平日でも平気で毎日埋めてる楽天OPすごいんですよ。デ杯だとこうはいかないもん(経験則)。特に初日の最初の抽選は、席種によっては全当もあるのかなと。認識甘いですかね?
デ杯は応援が一番大事です。ホームだからおもてなし、ホスト国だから相手をリスペクトというのは必要ですが、最低限必要な範囲でいいです。
というか、相手をリスペクトするからこそ全力で応援しなければいけないのではないでしょうか。相手をリスペクトするがゆえに、手を抜かない。強さを認めるからこそ応援で全力対抗する。そういうものだと思うんです。
ただこの考えは浸透していない。昨年の盛岡でも痛感しました。初見の人に分かってもらうことは本当に難しい。
私からのお願いは、既存のテニスファンの懸命の努力です。立ち上がり、声を出し、大きくリアクションをして応援している人が増えれば、あるタイミングからそれが常識に変わる。日本人の習性である「誰かがやっているから自分もやる」思考になってもらうためには、ある程度の人がそれをやっている必要があります。今のところ、私が現地で見たりテレビで見たりしたデ杯では、そこに至っていません。応援団と一部のファンのみに収束してしまっています。
会場とチケットは近いうちに発表になると思います。私は一度見てみたい。有明が満員になり、うねりを帯びながら日本に声援が届く光景を。
それをWGでできなくなったことは本当に残念でなりませんが、やることは変わりません。日本チームがこれまで受けてきた他国での洗礼。受けっぱなしでいいのでしょうか。
特にタイの展開と応援の空気の流れを決める初日は来年も金曜日と、出足が悪くなることが想定されています。
チケットも取りやすいだろうし日本人、休もう。そして会場へ。
よろしくお願いいたします。