デ杯チームランキングの計算方法について(2019新制度対応)
※重要なお知らせ
2020年3月のランキングシステム改定により、この記事で説明されている方式は2019年限定ルールであることが判明いたしました。
2020年以降の恒久的なルールについては新しく公開される記事を参考にしてください。
また、2020年3月のタイの付近で発表したランキングの情報は全てこの記事のルールに基づくものでした。避けようがなかったのですが、間違った情報を流してしまい大変申し訳ありませんでした。
こんばんは。
というわけでデ杯チームランキング試算です。
本当は今年のファイナル終了前に間に合わせたかったのですが、時間の関係上間に合わなかったので計算方法の解説と、実際の運用状況を解説する記事となりました。新制度1年目で計算ミスも多くなることが想定されたので、実際の結果を見れたのは少し助かりました。
この記事を読み進める前に、その前の新制度についての記事を読んでいない人は
http://twosetdown.hatenablog.com/entry/2019/11/23/151402
こちらから読み進めることを推奨します。
そもそもデ杯チームランキングは、デ杯公式から発表している各国のデ杯成績をもとにしたチームランキングです。ATPランキングとは一切関係ありません。
2018年までの旧フォーマットでもチームランキングが存在し、私が必死こいて試算した記録が残っています。
しかし2019年の新デ杯から、戦う形式が変わったので当然ランキング計算方法も変わります。
2019年ファイナルの組み分けを抽選する際には、突然改訂されたランキングが発表され、微妙に順位が変わっている事象が確認されたので個人的には大混乱しました。
が、今回の新ルールになってとてもありがたいことが一つあります。
ATPで言うところの「rankings breakdown」に相当するポイント内訳が見れるようになりました!!!
今までは4年間かけてじわじわと減っていくポイントを、各種ボーナスポイント込みで計算していたので、一種の連立方程式を解いているような感覚でした*1
しかしこれによって、私のこの後の説明を聞けば誰でもランキング試算ができます!!!
いやしないですよね。
今でこそATPランキングはノウハウがあれば計算できるし、してる人増えたんですけどデ杯はたぶん誰もやらないでしょうね…
しかも、使いどころが少なくなるのでますます需要ない…
しかし誰かがやらないといけない。私は色々思うところありましたが、新デ杯もなんとか船出となったので、引き続き見ていこうと思います。デ杯大会の感想については別記事で。
というわけで、デ杯チームランキングの計算方法を解説していきます。
まず、今回のデ杯チームランキングで重要なのは、ランキングの更新が主に年4回→2回になることです。
旧ルールでは、年間4回のタイ(WG1R、WGQF、WGSF/入れ替え戦、WG決勝)が終わるごとにランキングを更新し、新たにドロー抽選する場合にはそのランキングを使ってシードなどを決めていました。
しかし新ルールでは、各国年間に2つの週しか参加しなくなります。具体的にはqualifierタイ(予選ラウンド/WG入れ替え戦)とファイナル/WGタイです(夏~秋の時期)。
WG1とWG2(以下この略称で行きます)が全米後、3以下のグループは任意の時期、ファイナルは11月と開催時期がまちまちですが、この都度ランキングを更新するのかどうかは来年の運用を見て確認します。今の段階では不明です*2
というわけで、年間にやる試合の数が減るためチーム1勝の比重が以前より大きくなります。それを是正するために、新ルールでの計算方法は大きな変更点が加えられています。
まず、新ルールでのランキングは引き続き4年間の成績をポイント化して、傾斜をつけて合計する方法です。これは旧ルールと同じ思想です。
具体的には
qualifierタイ後…(quaifierタイのポイント)+(1年前のシーズンのポイント)+(2年前のシーズンのポイント)×0.75+(3年前のシーズンのポイント)×0.50+(4年前のシーズンのポイント)×0.25
ファイナル後…(その年のシーズンのポイント)+(1年前のシーズンのポイント)×0.75+(2年前のシーズンのポイント)×0.5+(3年前のシーズンのポイント)×0.25
こう書くと分かりにくいですが、ポイントの増減で見ると
ファイナル→qualifierタイ…qualifierタイのポイントを足すだけ
qualifierタイ→ファイナル…1~4年前のポイントが25%ずつ減、ファイナルのポイントを足す
となります。
なお、2018年以前のポイントについては、今の制度との互換性を取るため、ポイントが10分の1になります。*3
成績をポイント化する際に出てくるファクターは
S…ステージポイント
W…勝利ボーナス
R…ランクボーナス
A…アウェーボーナス
の4つです。下の3つについては旧ルールの計算方法を知っている人であればピンとくると思います。順に解説していきます。
旧ルールでは、どの位置にいようと、タイに勝たないとポイントが入らない仕組みになっていました。例えばWG1回戦で2-3、WG入れ替え戦で2-3で敗れた国があった場合、その国が1年間に稼いだポイントは0です。どれだけ僅差でも0になります。2012年の日本の結果なんですけどねこれ。
しかし新ルールではこういうことをしていると、現実の実力とポイントの関係がばらつく可能性が高くなります。また、ファイナルでは最大5タイあるので、そこと入れ替え戦勢とのポイントの適切な分布が求められるようになりました。そこで、各グループ帯に所属しているだけで入るポイント、「ステージポイント」が新設されました。これが今回の改正のミソです。2019年以降は、1年間デ杯のタイで勝てなくても、必ずポイントが入るようになります。
ステージポイントは、本番の夏~秋のタイの時に、どこのグループに所属していたかで自動的に入るポイントです。ポイントは以下のように入ります。(一部抜粋)
ファイナル決勝 300
ファイナルSF 200
ファイナルQF 150
ファイナルリーグ戦 100
WG1 50
WG2 40*4
なお、ファイナルの決勝トーナメントに進んだ場合は、ポイントを足していくのではなく、最高到達したラウンドのポイントのみが加算されます。例えばベスト4で終わったイギリスの今年のステージポイントは、200+150+100ではなく、200ポイントです。
次に勝利ボーナスですが、タイに勝利した時に加算されるボーナスです。
ただし、加点対象のグレードは限られていて
WG決勝 200
WG1 10
WG2 10
のみです。
つまり、qualifierタイでは、どの国も勝利ボーナスはありません。
これでいいの?がばがばでは?と思われそうですが、これで大丈夫です。
qualifierタイの勝利に対する評価は、ランクボーナスと、ステージポイントに含まれています。
結局、予選ラウンドで勝った場合ファイナルに昇格、負けた場合はWG1に降格することになりますが、そうなるとステージポイントが50違います。qualifierタイで勝利した分の加味は勝った段階ではなく、その年のステージポイントで評価されています。
同様に、ファイナルの勝利ボーナスは決勝のみですが、例えばQFとSFの国の違いもちゃんとステージポイントで評価されています。
ただし、ステージポイントだけだとスペイン(優勝)とカナダ(準優勝)の差をつけるポイントがありません。なので、WG決勝の勝利だけ200ポイントという大きな勝利ボーナスが入っているのです*5
次にランクボーナスですが、これも旧ルールと変わりました。
旧ルールでは、自分のランキングより相手のランキングの方が上だった場合にランクボーナスが適用されるというものでした。
例えば、33位の国が32位の国に勝つと適用されますが、31位の国が32位の国に勝つと適用されないという超がばがばルールでした…
そうではなく、とにかく世界上位相手に勝てば一律でボーナスポイントがつくルールになったので、よりよい改正だと思います。また、qualifierタイに勝った場合にも適用されるので、その勝利の評価の意味合いもあります*6
対戦相手のランキングに応じて
1-2 10
3-4 9
5-8 8
9-16 7
17-32 6
33-64 5
65位以下 4
ポイントが加算されます。
最後にアウェーボーナスです。
ホーム&アウェーのルールが適用されているのは、予選ラウンド、WG1、WG1プレーオフ、WG2、WG2プレーオフです。
しかしこのアウェーボーナスは、予選ラウンド、WG1、WG2にのみ適用されるようで、WG1プレーオフとWG2プレーオフには適用されないようです。
これは「同一年に2回アウェーボーナスが取れないようなルールになっている」(The format of the competition prevents Nations from winning two away ties in a year.)という記述があることから、事実関係を考えると間違いなさそうです。
アウェーボーナスは、A=0.25×(S+W+R)と、勝ったタイの評価に対して1.25倍するような追加分のポイントとなります。qualifierタイにはステージポイントがありませんが、特例で80ポイントを代入します。
ということで、以上のことが分かれば原理的には全ての国のランキングポイントを計算できます!!!やったね!!!
って、んなわけあるかああああああああああああああ
新しいことだらけで訳が分からないですよね。私もそう思います。
というわけで、試算も間に合わなかったので、今回は実際に各国のランキングポイントを見ていきながら、こんな風に計算するのかなという感覚を掴んでもらうことに終始したいと思います。
分かりやすいところから行きましょう。日本です。
計算式は、ファイナル後の場合、(その年のシーズンのポイント)+(1年前のシーズンのポイント)×0.75+(2年前のシーズンのポイント)×0.5+(3年前のシーズンのポイント)×0.25
ですが、便宜上各年ごとに獲得したポイントをP2019 P2018のように文字で置き換えると
ファイナル後のポイント=P2019+P2018×0.75+P2017×0.5+P2016×0.25
となります。
日本のP2018=100
日本のP2017=100
日本のP2016=100
全部WG1R負け+入れ替え戦ホームで勝利なので、3年連続旧ルールで1000ポイント。10分の1に圧縮されるので100ポイントずつです。
2019年
予選ラウンド 中国アウェー勝利
ファイナル リーグ戦 フランス敗北 セルビア敗北
予選ラウンドはまず中国に勝利してランクボーナス6が入ります。
さらに、アウェーで勝ったのでアウェーボーナスをS=80で計算、勝利ボーナスは0なので、(80+0+6)×0.25=21.5
したがって、6+21.5=27.5ポイントがこのタイで獲得したポイントです。
ファイナルは予選リーグ敗退で、ステージポイント100が加算。さらに、ランクボーナスは0、勝利ボーナスとアウェーボーナスはそもそもファイナルでは適用されないので、100ポイントがファイナルで獲得したポイント。
したがって、日本のトータルポイントは
(27.5+100)+(100×0.75)+(100×0.5)+(100×0.25)=277.5
となります。
次にファイナルベスト4のロシアを見てみましょう。
ロシアのP2018=32
ロシアのP2017=0
ロシアのP2016=209
2016年は、ゾーングループ1から3連勝。入れ替え戦も勝ってランクボーナス付きで2090ポイントを獲得、圧縮されて209ポイント。2017年はWGも入れ替え戦も敗れて0。2018年は降格を回避する1勝で320ポイントを獲得、圧縮されて32ポイントです。日本と同じく、全部WG1R負け+入れ替え戦ホームで勝利なので、3年連続旧ルールで1000ポイント。10分の1に圧縮されるので100ポイントずつです。
2019年
予選ラウンド アウェーでスイスに勝利
ファイナル リーグ戦 クロアチアに勝利 スペインに敗戦 QFでセルビアに勝利 SFでカナダに敗戦
予選ラウンドではまずスイスに勝利してランクボーナス6が入ります。
さらに、アウェーで勝ったのでアウェーボーナスをS=80で計算、勝利ボーナスは0なので、(80+0+6)×0.25=21.5
したがって、6+21.5=27.5ポイントがこのタイで獲得したポイントです。※日本の計算方法と全く同じ
さて次のファイナルが複雑ですね。これをしっかり見ていきましょう。
まず、ステージポイントはベスト4でしたので200ポイントです。
ランクボーナスは勝ったタイにのみ適用されます。クロアチア、セルビアが相手でそれぞれ10,8ポイント入ります。クロアチアは2位だったので、ルール上最大の10ポイントです。
勝利ボーナス、アウェーボーナスはありませんので、0ポイント。これらを合計して218ポイントがファイナルでの獲得ポイントです。
したがって、ロシアのトータルポイントは
(27.5+218)+(32×0.75)+(0×0.5)+(209×0.25)=321.75
となります。
最後に今年の優勝国、スペインです。
スペインのP2018=609
スペインのP2017=261.25
スペインのP2016=200
2016年は、ゾーングループ1から2連勝。1600ポイントですがアウェーボーナスにより2000ポイントを獲得、圧縮されて200ポイント。2017年はWG1Rがアウェー勝利+ランクボーナス付きだったため2612.5ポイントと少し小数点が煩雑な結果に、圧縮されて261.25ポイント。2018年はホーム連続勝利+ランクボーナス1回で6090ポイントを獲得、圧縮されて609ポイントです。
2019年
ファイナル リーグ戦 ロシアに勝利 クロアチアに勝利 QFでアルゼンチンに勝利 SFでイギリスに勝利 決勝でカナダに勝利
予選ラウンドは免除されています。
ファイナルを見ていきましょう。
まず、ステージポイントは決勝でしたので300ポイントです。
ランクボーナスは勝った5つのタイに適用されます。ロシアが6、クロアチアが10、アルゼンチンが9、イギリスが8、カナダが7です。
勝利ボーナスは決勝で勝った際の200ポイント。アウェーボーナスはありませんので0ポイント。これらを合計して300+6+10+9+8+7+200=540ポイントがファイナルでの獲得ポイントです。
したがって、スペインのトータルポイントは
540+(609×0.75)+(261.25×0.5)+(200×0.25)=1177.375
となります。ただし、小数点3桁目以下は四捨五入するので、1177.38ポイントが正しいスペインのランキングポイントです。
小数点以下を四捨五入しないといけないのは、ただでさえ旧ルールで小数点のポイントになっていたものをさらに10分の1に圧縮してしまったからで、なら新ルールのポイントを全部10倍にすればよかったのでは…と思います。
いかがでしたでしょうか?まあ複雑ですよね。自分でやりたくないですよね。でも私は計算しますし、いくつかまだ今の段階で分かっていないルール以外は全部把握したので、一応2020年からは試算できます。
2020年3月までこの記事のことをひっそりと覚えていてもらえたら嬉しいです。
*1:実際そうで、予想される相手のランキングを見積もったうえで、各時期に撮った魚拓(wayback machine)と照らし合わせてそれが妥当かどうかを検証し続ける作業でした
*2:インド×パキスタンの結果を踏まえて12月にランキングを更新していることから考えると、都度更新するのか?
*3:および、小数点第3位を四捨五入しているが、めんどくさいので脚注へ
*4:WG3も40ポイントとされているが、実際は30ポイントっぽい。WG3以下のグレードのポイントはrankings explainedに書かれている数字と、実際に入ったポイントが違うので、どちらが正しいのか不明…移行年だから特別ルールなのか?
*5:だったら初めからWG優勝のステージポイントを500にすればいいだけなのでは?と思うのですが、何の違いが生まれるのか私にはわかりませんでした…
*6:ただし、2019年は制度移行年のため、qualifierタイに相当する試合が予選ラウンドしかなかったため、WG1プレーオフ、WG2プレーオフで勝った場合にもランクボーナスが適用されるかは、2020年の結果が出ないと分からない