two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

クレーシーズン展望~stop Djokovic、ナダル王朝復活なるか、新クレーキング誕生か~

こんばんは。

今日になって喜びのニュースが入ってきました。ティプサレビッチ、復帰戦でいきなり勝利です。

1年半ぶりのシングルス出場となったティプサレビッチは当然1年間しか持たないランキングポイントのシステムからATPランキングポイント0。文字通りゼロからの再出発となりました。

初戦の相手はClezar。できる限りそのまま選手名を掲載せず日本語読みで掲載する私が英字表記にしているように、正直今回初めて知った選手でした。22歳でチャレンジャー上がり。昨年はチャレンジャーファイナルに出場し決勝まで進出(シュワルツマンに敗戦)。しかしツアーでは未勝利でまだ成長段階という選手でした。

ティプサレビッチはファイナルセットタイブレークで2本のマッチポイントをしのいでの辛勝。Clezar相手に苦しんだと言えるかもしれませんが、今回は初日が出ることが最も大事。復帰戦としてはこれ以上ない最高のスタートでしょう。

しばらくはツアー本戦にプロテクトランキング(公傷によるエントリー補填制度)を使ってランクなしでもツアーに出れます。回数は限られているので(詳しいことは私も分かっていません、ごめんなさい)その間にせめてトップ100に戻すのが目標になってきます。簡単なようですが約600pは稼がないといけないので結構遠い道のりです。

さて今回はクレーコートシーズンの展望です。各大会の特徴についてはすでに閑話休題シリーズにてまとめてありますので初見の方はそちらもどうぞ。

今年のクレーシーズンはいくつか注目点があります。まずは全仏までの大会紹介です。

week14(今週)…ヒューストン(ATP250)、カサブランカATP250)

week15…モンテカルロ(マスターズ)

week16…バルセロナATP500)、ブカレストATP500)

week17…イスタンブールATP250)、エストリル(ATP250)、ミュンヘンATP250)

week18…マドリード(マスターズ)

week19…ローマ(マスターズ)

week20…デュッセルドルフATP250)、ニース(ATP250)

week21~22…全仏OP(パリ、グランドスラム

エストリル(ポルトガル)はオエイラス(ポルトガル)から開催権を移譲、久しぶりのツアー開催です

これは非常に過密な日程です。2週間でのんびりマスターズをやっていた先月とは違います。次から次へと大会がやってきます。

そして忘れられがちですがこれはクレーの大会だということです。クレーは最も試合時間が長くなるサーフェス、理由はバウンド後のボールの減速によって他のサーフェスならウィナーになるボールが拾われるからです。

3セットマッチだと2時間を超える試合はハードコートだとあまりないのですが、フルセットに突入しただけで2時間越えは確定事項、ひどい時は3時間かかります。観戦する側も気を付けたいところです(前試合からの時間読みなど)。

さてこの事実を並べるとナダルが異常だということが分かりますが、詳しくはあとで。

多くの選手のスケジューリングはマイアミ→1~2週休み→モンテカルロorバルセロナ→1~2週休み→マドリード→ローマ→1週休み→全仏となります。非常にゆとりのないスケジュールです。

特にマドリード→ローマは1週マスターズが2週連続なだけでなく、スペイン→イタリアの移動も厳しいです。

ところが、今シーズンは二人のトップ10選手がこの王道コース(というかそれ以外どうしようもないコース)から外れてクレーを戦います。二人ともとんでもない戦略で臨んできています。

フェデラーの戦略

フェデラーモンテカルロ→休み→イスタンブールマドリード→(ローマ)→休み→全仏というルートで臨みます。

特徴的なのは今年新設されたイスタンブールです。マイアミで休んでいた分をここで取り返そうという考えです。そして大会側は第1回にフェデラーを呼ぶことに成功し、興行面でも大きな成功を収めることが予想されます。

フェデラーはマイアミでの0pは強制加算ではないので、250を確実に優勝してマスターズで稼げるビッグポイントに肉薄したいところです。

イスタンブールの参戦予定者はフェデラーのほかにディミトロフ、クエバス、ヒラルド、モナコとなっており、ATP250としては比較的穴場の大会です。ディミトロフはそこまでクレーは得意ではないので、クエバス、ヒラルド、モナコといった選手が脅威ですが今のフェデラーであれば何もなければ優勝は確実です。

マイアミを回避した理由の一つに連戦を避けるという理由があります。フェデラーはIW→マイアミ(これで4週)→休み→モンテカルロという日程を嫌った形です。しかしイスタンブールに参戦するとローマまで3週連続になります。

一部報道ではローマ回避なのではという話も出ています。マドリードの勝ち上がり次第では(あるいはそれ以前の地点で)ローマの欠場が発表される可能性はゼロではありません。

こうなってくると第2シード、第4シードに繰り上がる3位、5位が大事になってきます。ちなみにローマのシードに使われるランキングはweek17のあとの月曜日のランキングで、ナダルマドリード1000p、錦織のマドリード600は保存されたままです。

・マレーの戦略

そしてもう一人意外な形で戦うのがマレーです。

マレーはクレーが苦手です。なんと250も含め未タイトルです。理由はあまりわからないのですが、割と極端に成績が落ちます。昨年のクレーシーズンは自己2番目のいい成績でした。年初からいい成績で来ているマレーは昨年をディフェンドできればそれだけでも最高です。

そんなマレーはなんとモンテカルロをスキップ→休み→ミュンヘンマドリード→ローマ→休み→全仏というルートを取ります。

モンテカルロは去年もスキップしているので違和感はないのですが、ミュンヘンへの参戦は驚きでした。3週連続参戦になってしまいます。しかしマレーの場合決勝まで行くことはないでしょうからあまり意味はないのでしょうか。

ミュンヘンで初タイトルを取れるのかどうかはマレーのクレーシーズンを占ううえで注目です。

他のトップ10選手は出場していませんが、バウティスタ=アグト(昨年クレータイトルあり)、モンフィス、ゴフィン、フォニーニ、カルロビッチ、トミッチ、トロイツキ、ティエムとATP250にしては大激戦の大会です。初戦からティエムの可能性もあるのです。

一応マレーも1大会はマスターズ0p免除権があるのですが、マドリードやローマで使うことは…ないですかね。

さて、ここからはツアー全体のクレーシーズンの見所です。

・四半期好調の選手が勢いを維持できるか

3月までは好調、あとはてんでだめだったということはよくあります。サーフェスが変わることでいい感覚を失い、ハードで結果を出していた選手が簡単に敗れることがよくあります。

昨シーズンで言えばベルディヒ、ドルゴポロフ、チリッチ、こういった選手がいきなり失速しました。

今シーズン3月まで好調を維持してきたのはトミッチ、トロイツキ、アンダーソンあたりでしょうか。

特にトミッチは今後も自己最高位のランキングを伸ばせる可能性があるだけに注目です。引き続き台風の目になれるか。

・クレーコーター、下位とはいえ要注意

この時期だと50位のクレーコーターが30位の普通の選手より怖いということはざらです。

11位以下でランキング以上の危険な匂いを感じる選手をピックアップしました。

モンフィス(地味にGSでは全仏が一番成績いい)

ロブレド

クエバス(要注意!)

ガルシア=ロペス

マイヤー

フォニーニ

ベルダスコ

ヒラルド

モナコ

ティエム

シュワルツマン(チャレンジャーレベルではクレー無双)

アンドゥハル

ベルロク

アルマグロ

挙げだすときりがないのですが、こんなところでしょうか。

特に私が注目しているのはティエムです。これらのリストの中でも最も若手、昨年マドリードでバブリンカを破っており、7月クレー、250のキッツビュールで決勝進出。マイアミでの8強でさらに勢いを増しているだけに要注意です。

そして最も厳しい下位シードはクエバスでしょう。たった1年でクレータイトル3つを獲得したクエバスは乗せると危険です。リオのナダル戦でもいい試合をしており注目です。

・「stop Djokovic」

3か月を終わってジョコビッチが独走状態。誰がジョコビッチを止めるのか?はクレーシーズンの見所です。

ジョコビッチナダルモンテカルロ連勝記録を止めたこともあり、昨年はローマでナダルに勝っていて、クレーのナダルだからと言っても臆することなく望んでくるでしょうし、クレーは苦手ではないことは明らかです。

現状ジョコビッチをクレーでも止める選手が見当たりません。ナダルフェデラー、もともとクレーの方が成績が良かったバブリンカ(ただし当たっているとき)、そして期待を込めて錦織が可能性がありそうです。サーブがうまく当たればローマで善戦したラオニッチも期待できます。

ラオニッチはキック系のサーブをうまく使って去年のクレーシーズンでは大きく飛躍しました。高く跳ねるこのサーブは他の選手も厄介ですし、ビッグサーバーの割には今後もクレーで苦労しなさそうです。

・錦織は再び新クレーキングに名乗りを上げられるか

ローマ、全仏でラオニッチとディミトロフががんばり、若手世代間の新クレーキングの座はなかなか決まりませんでしたし、ケガ以外の理由で一度も負けなかったのにかなり海外ファンからも忘れられつつある錦織の快進撃。今年はもう一度繰り返せるでしょうか。

結論から言えば半々だと思います。錦織の守備力が生きるクレーでは今年もコンスタントに戦えるでしょうが、問題点は錦織対策が進んでいること。

当時のクレーシーズンはまさに対策がなされず、錦織がやりたいように相手を振り回し、文字通りの蹂躙で勝ち続けました。

しかし今年はそう簡単にはいかないでしょう。

加えて問題なのがストロークの安定性。簡単にウィナーが決まらないクレーでは安定したストローク力が必要。

マイアミでの試合を見る限り戻ってきたように思えますが、ふたを開けるまではわかりません。

バルセロナは上位の参戦者が多く例年以上に厳しい戦いになりそうなので、まずは4強に入れればOKでしょう。それ以降はボーナスステージ感覚で行ってほしいです。

ナダルは戻ってこれるのか

最後はこれです。クレーになれば帰ってきたナダルの飽きるほど強いプレー。今年は見れるのか本当にわかりません。

ポイントはナダルのシードです。この辺はランキング予測で詳しくやりますが、ナダルの失効は

モンテカルロ…180(Q)

バルセロナ…90(Q)

マドリード…1000(W)

ローマ…600(F)

全仏…2000(W)

3870p。最大で5500p稼げるこの場所で3870pは「いつものナダルなら」これより増やしてシーズンを終えることは間違いないのですが、リオでフォニーニに負けたのを見ると決して簡単ではないように思います。

ナダルのシードに関しては、モンテカルロは上二人の欠場がなければ第3シードです。バルセロナでも他のBIG4の参戦がなければ第2シード。ここまではOKです。

問題はマドリード、ローマです。ここで採用されるのは実質バルセロナ後のランキングですが、ここで錦織より上にいられるか。ナダルにとって重要なのはそこです。第5シードで迎えるようだときついです。

幸いにもモンテカルロQをディフェンドするのが簡単です。普通なら。ここで上積みできればナダルが自力でマドリード、ローマ4シードを確保することができます。

そしてモンテカルロバルセロナでの上積みは必須事項です。そのあとのマドリードローマ全仏には遊びがありません。一敗した地点で昨シーズンと同じか下回ることが確定します。

特にカギになるのは全仏で、ここでS止まりなだけで最大獲得ポイントは4220p。正直F以上じゃないとほぼ昨年より落とします。

錦織は1110pのディフェンドになっていて、正直4大会あればしっかりディフェンスできるので、全仏後に錦織より下になることがほぼ確定します。

ナダルはとにかく最初の2大会が大事です。モンテカルロで早い段階で負けるようだと、本当にやばいですね…