two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

この場所を「定位置に」、10度目のマスターズベスト4!(2016カナダ2R~QF)

7/27 現地11:00~(日本時間24:00~)

Masters1000 Canada(Toronto) Rogers Cup

2R

[3]Kei Nishikori 6-4 7-5 (Q)Dennis Novikov

7/28 現地11:00~(日本時間24:00~)

Masters1000 Canada(Toronto) Rogers Cup

3R

[3]Kei Nishikori 6-3 6-4 Rajeev Ram

7/29 現地14:00~(日本時間翌日3:00~)

Masters1000 Canada(Toronto) Rogers Cup

QF

[3]Kei Nishikori 6-3 3-6 6-2 Grigor Dimitrov

4大会連続のマスターズ4強をきっちり決めました。

と書きますが、マスターズ4強がここまで続くことはなかなかない。上位勢でも取りこぼしはあるものです。

きっちりとトップ10選手の責務を果たせるようになりました。

そして今大会の4強は、11上海、14マイアミ、14マドリード、14パリ、15マドリード、15カナダ、16マイアミ、16マドリード、16ローマに続いて10度目のSF進出となります。

特にここ最近のマスターズの成績は安定していて、いまだBIG4以外に負けなし。これでBIG4以外へのマスターズでの連勝は年初から17連勝中です。

初戦のノビコフ戦はジェットコースターのような展開でした。

4-0まではノビコフのストロークに勢いがなく、緊張していたのか全く勝負になっていませんでしたが、錦織がプレーレベルを落としすぎたのとノビコフが感覚を掴んできたのが噛みあって4-4になりました。

かなりいただけない内容でしたが4-4と追いつかれた直後の第9ゲームをしっかりとブレーク。傷口を最小限に留めて1セット目を6-4で取ります。

2セット目は先行するも追いつかれ、しばらく微妙なプレーが続きますがここも11ゲーム目をブレークしてタイブレークに持ち込ませず。本当の要所だけはきっちり締めて、復帰戦としてはまずまずの勝利だったと思います。

いつも言っていますがこの手の試合は勝利が必要。しかもできるだけ早い時間で。勝っていけば脇腹に対する不安も解消されるし、勝利が薬になります。

3回戦のラム戦は個人的に思い入れのある相手でした。

年初の記事でわざわざ書いたように、私にとっては4年前に信じられない敗戦で悔しい思いをした思い出の相手。

2年前のクアラルンプールでは勝っていますが、初戦でサービスゲームの不安が出ていただけにサービスで押し切られる展開もありえました。

しかしこの日はしっかり修正。BPこそ迎えたもののエース5本と高いポイント獲得率で寄せ付けず勝利。危ないゲームがいくつかありましたが終わってみればオールキープ、かつ3ブレークしての勝利となりました。

そして先ほど早朝に終わったディミトロフ戦。いつもの劇場型の試合となりました。

1セット目から錦織はサービスキープに苦労し、幾度となくBPを迎えます。

この日の錦織を救ったのはセカンドサーブでした。キックしながら右利き選手の内側に切れ込んでくるようなサーブで満足なリターンをさせません。球速が速くなくてもミスを誘うこのセカンドサーブが効果的でした。

BPでディミトロフのリターンミスをさせるなど、苦しいながらもオールキープする一方、ディミトロフはこのセカンドサーブでなかなかポイントが取れません。錦織に満足にリターンされるとこのラリーで主導権を取ることが難しく、じわりじわりと差がついていった第1セットでした。

第2セットはトイレットブレークから帰ってきたあと、いきなり自分のUEでブレークを許します。

一方のディミトロフもストロークに精彩を欠きぐだぐだな内容だったのですが、今度は錦織が幾度となくブレークチャンスを逃し、すべてのプレーに集中できていない感じでミス連発。1セットでUE22というとんでもないスタッツで2セット目を落とします。

原因を脇腹に考えている人が多いですが、結果論ではなく最初から私は熱中症では?と思いながら見ていました。

顔面が紅潮し、ぼーっとしている感じがしました。またサービスも重心移動が少ないサーブを打っている印象がありました(そもそも今大会はややサービスフォームを変えている気がするが)。

脇腹が痛ければプレーの一部にだけ悪影響が出るはずで、全体的に散漫だったので軽い熱中症の類かな?などと考えています。あとは練習を再開したばかりなので単に試合慣れしてなくて「試合の体力」がなくなったのかなと。

「試合の体力」というのは試合で頭を使いながらプレーすることで消費する、単純なフィジカルとかとは違う体力の概念です。

試合勘が鈍っていたことで、しかも張り合いのある相手と試合をしたことで一気に疲れてしまったか。

ディミトロフもこの時間帯は自分のミスもあってつなぐプレーしかしていなかったのですが、錦織はオフェンス一辺倒。早めに決めようとするポイントが多くプレー判断を誤ってしまったかなという印象です。

第3セットの0-1、15-40とディミトロフに2BPが来たところまでは流れはディミトロフでした。

しかしこのセカンドサーブからのラリーを我慢して2本止めると、ここからエース2連発。ここで吹っ切れた印象があります。

次の第3ゲームでは伸びのあるストロークが帰ってきました。ラリーでポイントが取れようになったことで一気に流れは変わりました。チャレンジ成功によるセカンドサーブからのリターンでバック攻め。ディミトロフがバックハンドをミスして2-1とリードします。

その後は錦織が自分を鼓舞していく仕草や伸びのあるストロークなどもうこの地点で勝負は決まったという感じでした。そのまま6-2でファイナルセットを制しベスト4進出です。

それにしても今大会は脇腹の不安、気になる対抗シードという状況もあって、初戦から一戦必勝という気持ちの人も多かったでしょうが、終わってみれば4大会連続のベスト4です。ここで持ち帰った360pはでかいです。

私はウィンブルドンで180pで終わった時から「もしカナダで180p以下だったらウィンブルドン無理せず休んで健康体でカナダに入って360p取ればよかったじゃないか」と思っていました。

今年は五輪の影響で必ず勝ち上がりが荒れる大会が出ると思っていたので、その北米シリーズで自分も共倒れするような大会マネージメントを組んでいたら非常に残念だと思っていましたが、これでウィンブルドンの180pにも意味が出ました。

ウィンブルドンを休んで今週決勝まで行けば…という仮定もできますがそれはさすがにナンセンスでしょう。

まだ錦織は体100%、他選手微妙で「自力で確実に」決勝に行けるほどの安心感はないです。マスターズ決勝を2回しか経験していないのですから。

4強をコンスタントに取り、行けるところで決勝、優勝に行くというのが今の錦織のスタンスでいいと思います。

そういった意味でもすでにこのカナダは満点、いやそれ以上の出来だと言っていいと思います。

さてあとは文字通り加点するだけのボーナスステージがやってきました。

その相手はこれまでとは全く別次元、スタン・ワウリンカです。

ワウリンカは今シーズン多くのポイントを500以下の大会で稼ぐなど苦しんでいます。それでもレース暫定7位というのはさすがです。

そして今回は準決勝での対戦。勝ち上がりを見ても今週のワウリンカはいい時のワウリンカである可能性が極めて高いです。

正直ここまでの3戦は健康体であることを仮定すればイージードロー、確実に4強まで進みたいドローでした。

過去10回の4強までの勝ち上がりを振り返っても、100位以下の選手と2回当たり、しかもトップ30との対戦なしという勝ち上がりは他にありません。調べてみたら、2014年以降ではマスターズでの100位以下との対戦は15IWのハリソン、16マイアミのエルベール以外ありませんでした。そりゃあそうですね。本戦カットラインが100位より上になるのですから。

以上のことを考えても、脇腹がとりあえず普通である以上勝てるなら勝つべき試合でした。

しかし、明日からは違います。

明日の一戦、越えなければいけないある壁があります。下位に安定して勝てるようになった錦織にとって、重要なのは次、上位を喰ってかかることです。

そしてここで重要なデータを紹介しましょう。

「あの全米ジョコビッチ戦勝利以降、対トップ5は16連敗中」

そしてもっと突き詰めると、対戦相手の順位別の成績はこのようになります。

1位 0-8

2位 0-2

3位 0-3

4位 0-1

5位 0-2

6位 4-0

7位 0-0

8位 3-1

9位 1-2

10位 3-1

なんと対6位に4勝0敗という驚異的な成績(ベルディヒ1、フェレール1、ラオニッチ1、マレー1)になっているにもかかわらず、5位以上には16連敗中。

ではこの5位以上の選手の内訳は?そうです、ここ2年も安定して上位に君臨しているBIG4とワウリンカです。

対BIG4はジョコビッチ0-8、マレー1-3、フェデラー0-2、ナダル1-2となっていて、この15敗がすべて対トップ5の数字に加わっています。そしてもう1敗が15全豪のワウリンカです。

あれ、マレーとナダルに勝っているじゃないか、という話になりますが、マレーに勝った14ファイナルは当時マレー6位、ナダルに勝った15カナダは当時ナダル9位です。二人とも調子の悪い時期でした。

以前にも私は「BIG4の下には来ているが、決してBIG4には並んでいない」「調子の悪いBIG4には勝てるが、普通~それ以上のBIG4には勝っていない」ということを言いました。

ワウリンカはBIG4ではありませんし、マレーがGS3勝目を取った今格落ち感は否めませんが、それでもはまればBIG4と対等な試合ができるだけでなく勝つこともできます。

試合は全く見れていませんが今回のワウリンカはいい時のワウリンカであると思っています。

まずはこのワウリンカに勝利し、後半戦、昨年とは違うことを証明するには十分な対戦カードです。

明日朝の一戦は非常に重要な意味を持っていると確信しています。

ではその好調ワウリンカにどう対抗していくか?その答えはすでにQFまでのプレーに表れています。

注目したいポイントは2つです。

セカンドサーブ

②新クレーハイブリッドテニスの応用

まず1つ目はシンプルです。さきほどディミトロフ戦のところでも書きましたが、実はこのセカンドサーブ、大会序盤からずっといい状態でした。苦しい場面でノビコフ、ラムからもセカンドサーブ単体でポイントを取っていました。

この内に切れ込むサーブが、ワウリンカに高い打点で内に切れ込むように飛んできたときに、どれほど有効になるか…

今大会から特にこのサーブがいいので上位相手には初めて使います。このサーブで要所を切り抜けられるかは一つのカギです。

そしてもう一つは特にMSのガスケ戦で火を噴いたフォア逆クロスからの展開です。

片手バックハンドの選手にとって高打点のボールは泣き所です。

じゃあ練習すればという話ですが物理的に無理なのでどうしてもウィークポイントになることが多いです。

実は今日のディミトロフ戦でもさかんにこれを使っていました。これがうまくはまっている時間帯はディミトロフはバックに釘づけ。有効打を打てないのでラリーで錦織が優位に立てます。

先のドローは見ていないという錦織ですがまるでワウリンカまで想定したかのようなこのフォア逆クロスの応酬はラリー戦でポイントを取るためのキーです。

さらにこのハイブリッドテニス、もう一ついいところがありました。それは極端に下がってリターンすることです。

この下がってリターンもディミトロフ戦の3セット目1-4のBP、それからラム戦のBPでも使っていて、ラリーに持ち込むプレッシャーをかけることでポイントを取りました。

ワウリンカの1stサーブは強力です。もしBPでセカンドサーブになった場合確実にものにしたい。

このプレッシャーのかけ方に注目しましょう。

いろいろと勝つ方法を模索しましたが、正直ワウリンカが右へ左へバックハンドでウィナーを取ってしまえばノーチャンスもあり得ます。

実はワウリンカにもこの試合で乗り越えたい「あるデータ」があるのですが、それは試合後に。

ワウリンカにとっても今シーズン復調するための重要な試合です。